ニュースで目にする経済指標

 テレビや新聞で見かける経済に関する専門用語の意味を理解していると仕事や勉強の理解が深まります。もちろん株取引においても経済の専門用語を知っていれば売買に役立ちます。

 

 このページでは経済の専門用語のうち、次の経済指標について簡単に説明いたします。経済指標は株の値動きの短~中期的なトレンドを把握するのに役立ちます。

ニュース,新聞,経済指標

目次


1. マクロ経済の基本的考え方

1-1 三面等価の原則

三面等価の原則とは、国の生産、分配、支出は一致する、マクロ経済学上の原則をいいます。この原則を恒等式で表すと次のとおりになります。

 

GDP≡GDI≡GDE

 

この恒等式が成立する前提に立てば、政府が財政支出を増やして国内総生産が上がれば、国民の所得が増える理屈が成立します。

三面等価,生産,分配,支出

1-2 gdp

 GDPは、Gross Domestic Productの略称で、日本語で国内総生産といいます。GDPは一定期間内に国内で産出された付加価値の総額を意味します。

 

 ここでいう付加価値は、財とサービスの売上総額ではなく、売上高から売上原価、販売費および一般管理費、経常損益等を加減した後の利益相当額になります。

 

 GDPは国の経済規模の大きさを測る指標として使われ、日本は2024年6月時点で世界第4位ですが、かつて国内総生産世界2位を誇っていました。

1-3 経済成長率

 経済成長率はGDPの増加率を表しています。経済成長率は簡単な式で次のように表せます。

 

 当期GDP ÷ 前期GDP = 経済成長率

 

1-4 gdpデフレーター

  GDPは物価変動を考慮するか否かで名目GDPと実質GDPに分かれます。名目GDPは実際の取引価格に基づいて推計され、実質GDPは物価変動要因が取り除かれて推計されます。そして両者には次の関係が成立します。

 

 実質GDP × GDPデフレーター = 名目GDP

 

 GDPデフレーターとは名目GDPを実質GDPで除して求める係数をいいます。GDPデフレーターは国内生産品だけを対象とし、この値が上昇すると国内の物価水準が上昇していることを意味します。

 

 GDP、経済成長率、GDPデフレーターの3つの値を見る事で、GDPが伸びた要因が経済成長とインフレのどちらかを把握することができます。

 

GDPに関する詳しい情報は内閣府ホームページ「国民経済計算(GDP統計)」に載っています。

1-5 財政政策と金融政策

 財政政策とは、政府が歳入や歳出を通じて国の経済に影響を及ぼす事を言います。

 

 財政政策のポピュラーな形は、政府が税金を投入して公共事業を行う事が挙げられます。景気を刺激して国民所得を増加させるのが狙いです。

 

 金融政策とは、日本銀行が公開市場操作等の手段を用いて、金融市場における金利に影響を及ぼし、通貨及び金融の調整を行うことをいいます。

 

 現在の金融政策は、日銀による長期国債の市中買い入れが目立ちます。2023年1月の金融政策決定会合では、長期金利の変動幅の引き上げを決定しました。

 

 財政政策と金融政策どちらも完全無欠の経済政策ではありません。財政政策は、国民所得の増加に伴って金利が上昇し、その結果経済効果を減殺させてしまうクラウディング・アウトが生じます。

 

 金融政策は、貨幣供給量が一定水準を超えてしまうと流動性の罠に陥ってしまいます。

1-6 日銀金融政策決定会合

 日銀金融政策決定会合とは、日銀が金融政策の運営に関する事項を審議・決定するための会合をいいます。

 

 会合終了後に、日銀総裁が今後の金融政策の方向性などについて記者会見で発表します。金融緩和政策を維持するかどうか、金利をどうするか等を話すので、この会見で日経平均株価が大きく上下動する場合があります。


2. 景気に関する指標

 国は、経営者や投資家等が現在の日本の景気を把握するための材料として景気動向指数を定期的に発表しています。景気動向指数は、個別系列に基づいてCIとDIが発表されます。

2-1 景気動向指数の個別系列

 景気動向指数の個別系列とは、景気に先行して影響が出るもの、景気と同じタイミングで良くなったり悪くなったりするもの、景気に遅れて変化する30の項目を「系列」とし、それらを先行系列、一致系列、遅行系列に振り分けたものです。内容は次の表のとおりです。

景気動向指数の個別系列の概要

2-2 ci(コンポジット・インデックス)

 CIは、景気に敏感な指標の量的な動きを合成したもので、主に景気変動の大きさやテンポ(量感)を測定するのに適しています。

 

 近年、景気変動の大きさや量感を把握する重要性の高まりを受けて、CIを中心に情報公開されています。

2-3 di(ディフュージョン・インデックス)

 DIは30系列のうち改善しているものを全体で除した割合をいいます。例えば一致指数が50%を超えていれば景気は拡大していると判断します。

 

 DIは景気拡張の動きが各経済部門へどれくらい波及しているか測定する事を目的としています。

2-4 日銀短観

 日銀短観とは、日本銀行が景気の現状と先行きについて企業にアンケート調査を実施し、その結果から日本経済の過去、現在、未来について分析把握した結果を発表したものを言います。

 

 日銀は年4回、資本金10億円以上の上場企業約10,000社を対象にアンケート調査している項目は主に次のとおりとなっています。

 

・企業の業況、資金繰りといった経営環境の良し悪しの判断項目。

 

・売上高、設備投資額等の計数項目。

 

・企業の物価見通し。

 

 日銀短観の中で特に注目されるのが業況判断指数(DI)です。業況判断指数(DI)は次の計算式で求められます。

 

業況判断指数(DI) = (1) - (2) 単位は%

 

(1)業況が良いと回答した企業数/アンケート回答企業数

 

(2)業況が悪いと回答した企業数/アンケート回答企業数

日本銀行

2-5 消費者態度指数

 消費者態度指数とは、内閣府より毎月発表される消費者の意識を表す指標で、景気の動きに先行して動く先行指数です。

 

 消費者に次の項目について、今後半年間の見通しを5段階で評価してもらったものを基に作成しています。

 

・暮らし向き

 

・収入の増え方

 

・雇用環境

 

・耐久消費財の買い時判断

2-6 企業物価指数(cgpi)

 企業物価指数とは、企業間で取引されている商品の価格を調査対象とした物価指数です。2020年の物価を100として指数化されます。

 

 企業物価指数は、国内企業物価指数、輸出物価指数、輸入物価指数からなり、サービス価格は含まれません。

2-7 消費者物価指数(cpi)

 消費者物価指数とは、総務省が毎月発表する、一般消費者が購入する財やサービスの価格の総合的な水準を示す指標をいいます。

 

 分かり易く言うと、私たちが日頃買物するときに感じる、「高いなあ、安いなあ」といった感覚を数値化したものです。

 

 消費者物価指数は、原材料、中間財、設備機械は、算出の対象としていません。

 

 コア消費者物価指数は生鮮食品を除いて算出した指数です。

 

 戦争や伝染病の流行と言った異常な経済環境を理由とする場合を除き、消費者物価指数は、景気が良いと消費者物価指数は上昇し、経済が停滞すると上昇率が鈍る傾向にあります。

消費者,物価

2-8 月例経済報告

 月例経済報告は、日本政府が月次で景気について示した公式見解です。


3. 需給動向に関する指標

3-1 鉱工業生産指数

 鉱工業生産指数とは、鉱工業製品の生産業を営む企業がどれだけ製品を生産したかを示すもので、一致系列に該当します。一般的には付加価値額で計算されます。

3-2 機械受注実績

 機械受注実績とは、内閣府が機械製造業者にアンケートを実施して、企業から受注した1か月間の受注状況を集計把握して発表したものをいいます。

 

 設備投資として機械を発注した段階で把握した数値なので、半年から1年先の設備投資の動向を示す指標と言われています。

 

 機械受注実績は一般的に景気動向の先行指標として利用されます。

機械設備

3-3 家計消費支出

 家計消費支出とは、家計が1か月間にどの程度の消費をおこなったかを示す指標をいいます。家計消費は国家の経済成長を牽引する重要な要素であり、国の経済成長率の約6割が家計消費に依存していると言われます。


4. 雇用の指標

4-1 完全失業率

 完全失業率とは、15歳以上の働く意欲のある労働力人口のうち、仕事を探しても仕事に就くことのできない人の割合をいいます。15歳以上の全人口ではない点に注意が必要です。

 

完全失業率 = 完全失業者/労働力人口

 

労働力人口 = 従業者+休業者+完全失業者

 

完全失業者とは次の3つの条件を満たす者をいいます。

 

(1)仕事が無く調査週間中に少しも仕事をしなかった。

 

(2)仕事があればすぐに就くことができる。

 

(3)調査週間中に仕事を探す活動や事業を始める準備をしていた。

 

※調査週間とは総務省が毎月行っている労働力調査の週間をいいます。

 

 完全失業率は、上記景気動向指数の遅行系列に該当するので、完全失業率が上昇すると景気の後退局面にある事を確認できたと判断します。

4-2 有効求人倍率

 有効求人倍率とは、企業からの求人数を公共職業安定所に登録している求職者で除したものをいいます。

 

有効求人倍率 = 有効求人数/有効求職者数

 

 有効求人倍率は景気動向指数の一致系列に該当します。景気後退の真っただ中えは数値が悪くなり、景気拡大局面においては数値が良くなります。

完全失業率,有効求人倍率

5. 金融の指標等

5-1 マネーストック統計

 マネーストック統計とは、金融部門から経済全体に供給されている通貨の総量を示す統計をいいます。

 

 日本銀行は上記M1、M2、M3、広義流動性の4つの指標を作成・公表しています。

 

 どの指標に重きを置くかは時代によって異なります。かつては「M2+CD」で表されるマネーサプライが重視されていました。現在はそのM2+CDの後継指標であるM2が中心統計となっています。

マネー

5-2 m1,m2,m3

 M1とは現金通貨と預金通貨の合計をいいます。

 

 M2とはM1に定期性預金と譲渡性預金を加えたもので、先行系列に採用されています。M2は発行主体を日本銀行および国内の主たる銀行並びに中央金庫等に限定して集計されます。

 

 M3とはM1に定期性預金と譲渡性預金を加えたもので、発行主体をM2より範囲を拡大して集計したものです。よって金額はM2よりも大きくなります。

5-3 広義流動性

 広義流動性とは、M3に金銭の信託、投資信託、金融債、銀行が発行する普通社債、金融機関が発行するコマーシャルペーパー、国債、外国債を加えたものをいいます。

5-4 マネタリーベース

 マネタリーベースとは、日本銀行が供給する資金量を示す指標であり、紙幣と貨幣の発行高と金融機関が日銀に預けている当座預金残高の合計をいいます。

 

 マネーストックが企業や家計の保有するマネーの量を表すのに対して、マネタリーベースは日銀が供給する通貨量を意味します。

 

 マネーストック統計とマネタリーベースの関係を図で表すと次のようになります。

マネタリーベースとマネーストックの関係図
濃い青がマネタリーベース。薄い青がマネーストック。

 誤解を恐れず申し上げると、マネーストックは金融機関の貸借対照表の負債の部の残高(の大部分)であり、マネタリーベースは日本銀行の貸借対照表の負債の部の残高(の大部分)です。

 

 マネタリーベースとマネーストックの関係を感覚的に理解できていれば、金融政策の理解が深まります。

5-5 貸出約定平均金利

貸出約定平均金利は、ゆうちょ銀行等を除いた国内銀行、信用金庫における約定時の貸出金利を平均したものです。当月中に貸し出した「新規」と月末残高の「ストック」の2種類があります。